review

A,B,C,D,E,F,G,H,I,J,K,L,M,N,O,P,Q,R,S,T,U,V,W,X,Y,Z
0,あ,,,,,,,,ら,わ

A

ACO / absolute ego

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artist:ACO  title:absolute ego  label:Ki/oon Records
 コケティッシュな感じで、日本歌姫のなかでも自分が大好きなacoの4th album。ていうか声がやばいです。
 今作のプロデュースは元電気グルーブでまりんだった砂原良徳で、ダブ、アンビエントの香り漂うイイコラボレートです。「歌モノ」と言ったら下世話だけど、とにかくaco独特の艶かしい声を前面に押し出していて、イイ意味で地味な(良く言えばシンプルな)トラックが花を添えている感じです。
 とにかく官能的な声にコーラスがイイ具合にかかっていて、とてもエロティック。そして深い、ハートのとても深いところを揺らすような非常に感傷的な生々しい言葉たち。こういうメインストリートで流れないようなR&B、好みです。
 これからのベクトルが何処を向いているのか、楽しみ。お気に入りはm-2,4,5,8。


 
Aco / Material

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artist:Aco  title:Material  label:Ki/oon records
 自分の中の日本歌姫ベストテンの中で三本の指に入ってしまう、空恐ろしい声の持ち主Acoの5th album。
 ダブで有名なadrian sherwood、いろんな人に曲提供している河野伸、silent poetから下田法晴や元電気グルーヴの砂原良徳がプロデュースで参加。で音のほうはダブ・アンビエント/ポップな感じ。今までの作品でもカヴァーが多かったけど、今回はkate bushの「this woman's work」をカヴァー。スマソ。知りません。orz
 まぁなんと言っても凄いのがこの声でしょ。プロデュース陣の創り出す冷たくて無機質なトラックの上に、大きな存在感の有機質な声のハーモニーが乗って、ほんのり、ぬくい。そのわずかな温もりが、全体の空気感としてたまらんのだなぁ。
 central67のアートワークが凄すぎ。本当ヤヴァい。お気にはm-2,6,7,8,11,12。


 
ACO / irony

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artist:ACO  title:irony  label:Ki/oon Records
 自分的には待ちに待ったACOの前作から約2年越しの6th album。これはもう大胆な変化。
 今回殆どのサウンドプロデュースを手がけたのはportable[K]ommunityの澤井妙治。加えて、シングルにもなった5曲目「町」はアイルランド・エレクトロニカの大御所mumのプロデュースで、10曲目「kitchen」にはくるりの岸田繁が参加してる。あと今回はACOは全曲で作詞作曲に関わっている。
 音のほうは今までのR&B/ダブなサウンドから大転換してラップトップミュージックによるエレクトロニカな感じ。音はエレクトロニカなんだけど、このアルバムは声、歌ありきで、歌が凄く大切にされてて、メロディーが凄く練られてる。この声でいいメロディー、ハーモニーをきかせるもんだから、アルバム全体の長さが短くても凄い密度濃いい感じにきこえるなぁ。
 歌詞も好きだな。「今日はサヨナラして涙をそっと拭いましょう」「明日になればすべてはずっとよくなるわ!!」きっとこの声が苦手って人もいると思うけど。お気にはm-3,4,5,8,9,10。


 
aco / mask

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artist:aco  title:mask  label:ki/oon records
 前作から約3年半の期間をかけて制作された、素敵な歌声の歌姫の7th album。今までどおりki/oonからのリリース。
 公式サイトには「邦楽の域を超越した」なんて少し恥ずかしいコピーが書いてあったけど、聞いてみるとまぁそんな事言いたくなるのもわからなくもない、世界におけるelectoronicaの流れを意識した感じです。前作の流れを汲んでいて、ピコピコしていて楽しい。acoさんの声も以前みたいに甲高い感じじゃなくて、優しく聞こえる。
 プロデュースは前作に引き続きportable[K]ommunityの澤井妙治、元電気グルーヴの砂原良徳、nidoの古谷建志など。武田真治がサックスを吹いていたりもします。あとイラストのクレジットにdatpoliticsの名前があります。フランスのあの人たちのこと?
 とにかくとてもかわいい感じです。全曲イイ感じ。


 
ada / blondie

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artist:ada  title:blondie  label:areal records
 ドイツはエレクトロハウスな音が詰められた、ミヒャエラ・ディッペルのソロユニットによるfirst albumで、areal recordsからは3枚目のリリース。
 深めのキックと低音の聞いたサウンドで、かなりハコノリなhouse musicです。それでいてpopの美味しいところも忘れない、聞きやすい感じ。でもやっぱダンスミュージック。低音聞かせてグニャグニャ踊りたい感じです。
 ちなみにm-7は1983年everything but the girlのカヴァーです。でも残念ながらリアルタイムで知らないっていうか、1983年は自分の生まれた年。上手く自分のものにしてるって感じがします。
 このCDは自分より全然音楽詳しい友達が貸してくれたモンです。だから良く知りません。お気にはm-1.3.6.7。


 
ae / bootleg

ae-bootleg
artist:ae  title:bootleg  label:sonig
 germany出身、がちゃがちゃサウンドでどたばたかましているae(イー)の2nd album。sonigからは28枚目のリリース。
 元ストック・ハウゼン&ウォークマンのアンドリュー・シャープリーと、元マミちゃんバンドの日本人女性ドラマー、エミコ・オオタによるユニットで、やっぱりsonigならではの遊び心あふれるサウンドだらけで、いろんなサンプル音でリズムが組み立てられています。
 日本語が入っていたり、乱暴に音が入れらているように聞こえるけどすごい精密に作られていて、とても楽しく作られています。ジャンルとしてはavant / electoronicaらへんに属する感じで、childiscら辺にも通じるものがあるかと思われます。
 でもちょっと飽きやすいかも…。お気に入りはm-2,6,10,11,14。


 
the album leaf / an orchestrated rise to fall


artist:the album leaf  title:an orchestrated rise to fall  label:music fellowship
 元tristezaのフロントマンjimmy lavalleによるソロで、今作が1st album。music fellowshipから5枚目のリリースで入手困難です。
 ジャンルはinstrumental post rock / slow coreといえばイイでしょうか、非常に叙情的でセンチメンタルで、またいろんなsamplingが散りばめられているので実験的ともいえますし、"lounge act"に関してはjazzのアプローチも垣間見えます。全編に渡って鳴っているのは丸っこいエレピと、fenderっぽいgt.アルペジオ、ブラシスティックによるdr.です。
 それぞれの楽器の旋律がclassicとは異なった美しいオーケストラを奏でていて、その深い深いダウナー的音響にやられてしまいます。sub popだけでなくplug research、morr、k、domino、warp、type、city center office、temporary residence、tomlabらへんが好きなヒトはすんなり聞けるのでは。その逆も然り。
 全曲イイですが、約20分の大作(盤によって違うかも)"a short story"は凄いです。


 
the album leaf / one day i'll be on time


artist:the album leaf  title:one day i'll be on time  label:tiger style
 tristezaのフロントマンであるjimmy lavalleのソロプロジェクトによる2nd album。リリースはtiger styleから11枚目かな。
 前作からはかなり激しさは減って、今作はかなり落ち着いて幻想的。じわじわと日常に溶け込んで夢と現実の境を曖昧にして、どこか感覚だけ遠のいてしまうような陶酔感を覚えます。これだけ少ない音数でもふんわり且つしっかりとした空気感があって、時間がとてもゆったり流れていくような雰囲気は読書をしたり寝ながら聴くのにはとてもイイのではないでしょうか。
 音の感覚としては生音主体のelectronica / instrumental post rockといった感じで、ミニマルな電子音を基盤に生音の弦楽器や鍵盤楽器が叙情的な旋律と和音に包み込まれてしまう感じ。低音〜中音の響きが心地良いのです。サンプリングにも野外の音や男性同士の会話などが使われていて、聴覚から視覚にまで影響を及ぼし、映画の一風景さえ見えてしまいそうな感じ。
 アルバム全体をとおしてフラットなのが、ヒトによっては飽きるかも。


 
ALL TIME QUARTERBACK / ALL TIME QUARTERBACK

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artist:ALL TIME QUARTERBACK  title:ALL TIME QUARTERBACK  label:barsuk records
 あどけない佇まいが印象的なdeath cab for cutieのフロントマン、benjamin gibbardのソロワーク、ALL TIME QUARTERBACKのアルバム。
 デモみたいでごくシンプルな、アレンジからしたらなんでもないようなアルバム。…なんだけど、ここまで心に染み入ってくるような声はそうないよ。凄い身近な感じで、どこにでもありそうなのになかなか気付けない優しさみたいな。
 ざくざくしたまじりっけゼロのギターストロークに、電子メトロノームみたいなチープなリズム音、暖かいアナログシンセの音。でこの声。メロディー。ここまでそぎ落としたからこその心地良さ。これ聞いてると日本音楽の大袈裟さは本当甚だしいなって思う。
 このCDをパソコンにつっこむと1曲目のプロモが見れます。あと8曲目「why i cry」はmagnetic fieldsのカヴァー。お気に入りはm-1,2,4,5,6,8,11。


 
the american analog set / the fun of watching fireworks

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artist:the american analog set  title:the fun of waiting fireworks  label:Emperor Jones records
 テキサス州の生楽器宅録バンド、amansetの1st album。Emperor Jones recordsからは四枚目のリリース。
 リビングルームで録音されたらしくとてもリラックスな音楽。落ち着いたドラムワークに、抑揚を無視したギタープレイ。「歌ってる」てよりも「喋ってる」て感じの勢いのないvo。アナログシンセの音も耳に心地良いです。楽器は分からないけど管楽器の音も優しい。
 やっぱり音楽は(気分にもよるけど)大袈裟じゃなくてこういうシンプルでゆったりしてる方が好きです、自分は。流してて自然に空気になっていく音楽。こういうのつくりたいなぁ。凄いテクニックとか、ドラマチックなアレンジよりも、日常をそっと彩るような音楽で素敵です。
 ジャケがちょっと地味すぎるなぁ。おきにはm-1,2,4,7。


 
the american analog set / from our living room to yours

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artist:the american analog set  title:from our living room to yours  label:Emperor Jones records
 テキサス州の生楽器宅録バンド、amansetの2nd album。Emperor Jones recordsからは14枚目のリリース。
 今回も相も変わらずノンストップなループサウンドで、肩に力を入れずのーんびりした雰囲気で作られた一枚。もちろん退屈なわけではなくて、実験的でもあるし、音の調性を考える上でも興味深いような音の重なり。大袈裟なアレンジをしなくても同じ手法でこう沢山の曲を作れるのはすごいことだと思う。
 適当に訳すと「うちらの居間から君のものへ」なんてタイトルで、まぁなんて暖かい言葉!と思ったけど、曲の感じは割りと冷たい感じを感じてしまうなぁ。居間なんていうよりもっと厳かな感じ。
 ジャケは急にお洒落になりました。お気にはm-2,3,4,5。


 
the american analog set / the golden band

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artist:the american analog set  title:the golden band  lable:Emperor Jones records
 テキサス州はオースティンの生楽器ジェントリーロックバンド、the american analog setの3rd albumにして、emperor jones28枚目のリリース。
 今回もドローンなもやもやループでまどろみの境地を彷徨う夢心地です。優しい空気がふわり。派手な展開がないこの手の音楽は、現代日本音楽リスナーには退屈に聞こえてしまうかも。自分は何もしなくても疲れているのでこういうのがいいです。
 直訳して「黄金の結束」。素晴らしい言葉です。でも皮肉なことにこのアルバムが出た後keyの女性が脱退してしまうという。インディ・シーンはつらいですね。
 あぁだんだん眠くなってきた。お気にはm-2,4,5,10,12。


 
the american analog set / through th 90s: singles and unreleased

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artist:the american analog set  title:through the 90s:singles and unreleased  label:emperor jones
 テキサス州indie pop band、amansetの90年代音源のコンパイル盤。リリースはemperor jonesから42枚目。
 内容は1stである"fireworks"から3rdの"the golden band"に関係するリリースの中で、シングルでリリースされた曲やお蔵入りになった曲、albumに入っている曲でもアレンジ違いのモノやremix、 liveトラックも含まれています。クレジットには1曲ごとに解説が加えられていて、彼らの音源の貴重なアーカイブスとして楽しめます。
 95〜99年という長い期間の中で、彼らの表現のこだわりが色褪せることなく続き、14もの楽曲が1枚の作品として違和感なく編みあげられています。 band名の通り、analogで徐々に暖かくなっていく雰囲気や、生活に抵抗なく溶け込んでくる音のハーモニーは心地良く、優しさに溢れています。
 特にdon't wake me (meow mix)〜dr. pepperと、複数の曲をまとめたliveトラックの流れは良い。


 
the american analog set / know by heart

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artist:the american analog set  title:know by heart  label:tigerstyle
 amansetのレーベルを移転しての4th album。こっからのデザインの方が好きだね。今は亡きtigerstyleからは18枚目。
 雰囲気の奥深さもさることながら、グルーブの面でもかなりレベルが上がってるなと感じさせる一枚です。それでも決してこう何ていうかゴリゴリせずにジワジワしてる感じがなんとも。
 ここまで少ない音数で曲を作るってのは生半可な腕やクリエイティビティではできんと思うのです。その辺がグッと来ます。しかもアルバムでは今作参加の2nd ギタ&ビブラフォンのショーンのおかげで、音がすごいカラフルになった気がします。
 ジャケのシールドで作られたハートが素敵。お気にはm-4,5,9,11。m-5はben&kenのhome:vol.5でbenによってカヴァーされてます。


 
the american analog set / promise of love

theamericananalogset-promiseoflove
artist:the american analog set  title:promise of love  label:tigerstyle records
 テキサス州のインディージェントルロックバンド、amansetの5th album。今は亡きtigerstyleからは47枚目のリリース。
 ドラムがすこしソリッドになって全体的にはグルーブが高まった感がするけど、やっぱりメインはkenの囁くような歌声と、ブランケットのように暖かくて優しいサウンド。音が部屋全体を暖かく包んで、なんていうか暖色の雰囲気に染め上げてしまう。
 もう、これこそインディーならでは、て感じのシンプルで飾り気はない音。でも聴覚にダイレクトに音が伝わって、暖か錯覚を起こさせます。決して派手さはないけど、ハートを丸ごと包みこむ、愛すべき音楽。このアルバムは大好きです。ビブラフォン最高!
 ジャケも4thからのデザインの踏襲でイイと思います。お気には全部。


 
the american analog set / set free

theamericananalogset-setfree
artist: the american analog set  title:set free  label:& records
 テキサスのジェントリーロックバンドamansetの6th album。& recordsから17枚目のリリース。見たことないけどmorrからもでてます。
 とても素敵な、控えめギター、ビブラフォン、kenのウィスパーボイス、ドローンベース、(たまにブラシによる)タイトなドラムのアンサンブルが、優しくて柔らかい、cuteなサウンドを奏でております。クッションみたい。
 少ない音数で勢いに任せずに演奏しようとすると、演奏する側のウマヘタがとても前に出てしまうモンですが、こう綺麗な感触のイイ音が出せるってのは凄いことだなって、改めて感心します。
 日本盤のボーナストラックとしてアルバム中の4曲のremixが入ってます。お気にはm-1,4,5,12,13,14,16。特にm-16のstyrofoam mixは最高です。


 
american football / american football

americanfootball-americanfootball
artist:american football  title:american football  label:polyvinyl
 イリノイ州にて1997年結成されたindie alternative rock bandの、1stにしてlast album。polyvinylから25枚目。
 繊細なgtアルペジオのレイヤーと、安定したba、軽やかでテクニカルなdrで構成された、シンプルながら非常に感傷的な1枚です。音の括りはindie post / alternative rock emoあたりで、言葉数は非常に少なく、只淡々と旋律が流れていくのだけど、気付かないうちにその中で懐かしい情景やセンチメンタルな記憶が蘇るのです。
 american footballはこのalbum1枚で活動を停止させてしまうのですが、フロントマンのMike Kinsellaはjoan of arc、owen、owlsで活動をしており、drのsteve lamonsはDMS、the geeseというbandで活動しています。pedro the lionやpinback、the appleseed castなどのus indieならではな、落ち着いていて綺麗な音を求めるヒトにお勧め。
 トランペットの音も哀愁が漂っていて素敵です。


 
THE ANTLERS / HOSPICE


artist:THE ANTLERS  title:HOSPICE  label:frenchkiss records
 NYはブルックリン発の3ピースindie rock band、THE ANTLERSの実質3rd album。リリースはfrenchkiss recordsから。
 このアルバムは、癌によってシルビアと云う名の愛人を失った男の、悪夢や虐待などにまつわる物語が語られていて、全体的にも悲哀に満ちた雰囲気が全体を覆っています。控えめでミニマルながらも深遠な音響や演奏と、vocalのPeterによる美しくも繊細なファルセットが、緊張感と冷たく張り詰めた空気を引き立て、絶品のメロディーが胸を打つのです。
 「ホスピス」というタイトルや、紅と白の2色だけによるデザイン、今生の別れを髣髴させるアートワーク(一方は患者で、もう一方は健常者であろう)に、悲壮感漂う物語が、生と死をテーマにした一つの作品を織り上げています。元々はフロントマンのPeter Silbermanのソロプロジェクトだったものに、DabbyとMichaelをバンドメンバーとして迎えたのが、今の形のようです。
 2、4、5、7、9の曲がエモくて最高です。


 
THE ANTLERS / BURST APART


artist:THE ANTLERS  title:BURST APART  label:frenchkiss records
 NYのブルックリンにおいて、indie rock界隈にてメキメキと頭角を現しつつあるTHE ANTLERSによる、4th album。2011年にfrenchkiss recordsからリリース。
 3人でのサウンド作りに関して、エレクトロの要素が大きく入り込み、前作のようなジワジワと感情や鬱憤が高揚していくslowcoreな音ではなく、ガラスのモザイクのように散りばめられたシンセの音の中で、酩酊した情動が怠惰なギターと共に喚き蠢き、夢幻の迷宮を築き上げます。このようなサウンドになったのは、前作の後継として必然であり、世界の終末を呼ぶ彼のファルセット・ボイスと相まって、この上なく耽美です。
 辛うじてポップながらも「愛はいらない」という叫びでアルバムの幕は開き、病的でカルトな臭いすら漂わせる中盤、"NO WINDOWS"や"EVERY NIGHT MY TEETH ARE FALLING OUT"を経て、ラスト3曲はとてつもなく上品で、極上に甘い響きを鳴らしています。こんなにも素晴らしい楽曲を書き上げながらも、知名度は限りなく低いですが、海外ではしっかり評価されているらしく、高嶺の花過ぎない存在であるからこそ、こんなにも愛らしいのでしょう。
 アートワークは"HOSPICE"と同じZAN GOODMANで、サウンドの変化を的確に表現できていると思います。


 
apple light / pocketful of rain

applelight-pocketfulofrain
artist:apple light  title:pocketful of rain  label:happy prince
 名古屋発、indie alternative rock / popな4人組み、apple lightのデビューアルバム。happy princeから8枚目。
 US / UK indieやalternative rock、post rock等の影響を垣間見せつつ、90年代後期の日本のロキノン世代の青臭くて情動的な、バンドブームが過ぎ去った後の微熱を内包したままのサウンド。繊細なアルペジオに柔らかいメロディーを乗せ、ベースの女の子のコーラスが織り交ぜられて、時折激しいグランジサウンドを鳴らしつつも、そこはかとなく切ないのです。
 デビューアルバムということもあって、やはり発声や演奏面・録音などに粗さが見えて、楽曲やアイデアの良さとぶつかっている感じがあります。それでも世界観やバックグラウンド・コンセプトがしっかりしてて、トータル的な安定感もある故に、次の作品にはとても期待大です。
 岩岡ヒサエさんによるジャケットの淡い切ない雰囲気と、ぴったりのサウンド。


 
ar / moderate lights

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artist:ar  title:moderate lights  label:ar
 2003年に東京にて結成、2人組みarの2nd album。自主制作です。
 rock / electronicaを基本に、様々なジャンルの音楽の影響を受けていると思われる実験的スタイルが非常に魅力的で、緻密に組まれたリズムの上を生楽器が楽しそうに踊っています。音のレイヤーが複雑に重なり合い、変拍子も織り交ぜられていて単純ではないのに、ハーモニーやメロディーが大変心地良い楽曲でとても中毒性が高いです。
 support guitarとして参加しているtsubasa ohta氏は、とても繊細な演奏を奏でつつ作曲にも協力し、現在ではメンバーとして参加しています。arの魅力は楽曲だけでなく、幻想的で抽象的な歌詞もまた中毒性が高く、こんな美声で歌われてしまっていて、最早違う言語にすら聴こえてきます。
 シンプルなジャケは肩の力が抜けていて、とても目を引いてイイ感じです。


 
art of fighting / empty night

artoffighting-emptynight
artist:art of fighting  title:empty night  label:Half A Cow
 オーストラリアはメルボルン発の4人組み、art of fightingの2nd mini album。リリースはhalf a cowっていうindie labelから。
 静寂の音楽とか言えばイイでしょうか、曲に逆らって物音でも立てたら全部崩れ去ってしまいそうなほど繊細な音楽。贅肉を削ぎ落としたかのように無駄のない、露骨なアレンジメントの一切ない中で、とても崇い存在感の男女混声の歌声が脈々とメロディをなぞって行く感じ。
 分かりやすい言葉で言えば、post / alternative rockなんかのちょっと抽象的なジャンルにカテゴリされると思うんですが、sigur rosとか初期velvet teen辺りの耽美派的な嗜好のヒトにお勧めかも。あとmogwaiとか、the album leafなんかかな。
 今の状態では非常に入手しにくい一枚です。17yさんサンクスです。


 
art of fighting / wires

artoffighting-wires
artist:art of fighting  title:wires  label:wonderground music
 オーストラリアはメルボルン発の4人組み、art of fightingの1st album。といってもこの作品の前に素晴らしいmini albumを既に2枚リリースしているけど。
 静寂と轟音が同居し、そのコントラストの中をある一定の意思を持った旋律が駆け抜けていく、実に耽美なアルバム。ギターストローク・アルペジオという隙間だらけの骨格に、ベースとドラムによる肉が与えられ、歌がその肉体に感情を与えています。
 世の中に多くあるpopとrockのセンスを消化した上でのスローコアで、とても感傷的。この悲しみの海はまるでおとぎ話のようで、しかしながらボクラが生きる社会こそがおとぎ話の張りぼてのようでもあり、悲しみの海こそがボクラの心の奥底にある現実なのかもしれない、と思うわけです。
 アルバム全体でコンセプトが作られていて、全曲あってのアルバムって感じですね。


 
art of fighting / second storey

artoffighting-secondstorey
artist:art of fighting  title:second storey  label:wonderground music
 オーストラリアはメルボルンのpost rockシーンから登場の4人band、2nd album。日本盤はwonderground musicからで、ボーナストラックは無し。
 タイトルが示すとおり、今作は前作から大きく1歩進んだ、彼らにとっての第2章。第2章といっても全く別物になってしまった訳じゃなく、slow core / post rock / emoが基盤。そして安定した演奏力もさることながら、音楽的表現の幅は広く、歌に込められた感情もより強くなっています。特に新しいリズムを取り入れているのが目立ちます。
 楽器編成は相変わらずシンプルで、vo、gt、ba、drにバックで薄くシンセがなっているのだけど、album全体に流れる清らかで胸を震わす空気感は健在で、その全てがとても優しいです。何よりもollieとpeggyによる美しい声が描き出すメロディラインの素晴らしさは筆舌尽くし難く、バンドアンサンブルが作る空気の中を貫く一筋の光のようです。
 1st以前の不器用なアレンジもイイけど、今作の完成度の高さもイイ。


 
ASA-CHANG & 巡礼 / 花

asachangandjunrei-hana
artist:ASA-CHANG & 巡礼  title:花  label:Hot-Cha records
 元スカパラダイスオーケストラのリーダーだったASA-CAHNGのソロ2作目。スカパラのイメージからは離れすぎてて笑いが起こります。
 やっぱり凄いと思うのは表題曲「花」。ボアダムスのyoshimiやスーパーカーのフルカワミキとかが詩を朗読する声をサンプリングして、タブラのリズムに合わしてギタギタに切り刻んだ上に流麗なストリングスが乗っかって、唯一無二の空間を作り出してくれます。隣の部屋からこの曲が聞こえてきたらコエーだろうな。
 他の曲も昭和の匂いがするものや、彼等なりのロックを感じる曲もある。ひとつの手法に囚われないところがすごいと思うな。あとタブラのテクニシャンであるU-ZHAANは巡礼トロニクスというなぞの楽器を使いこなすそうです。見てみたい!
 CDにはシール付。でもカットされてない。m-1,3,4,5がお気に入り。


 
atami / atami

atami-atami
artist:atami  title:atami  label:avex trax
 元「詩人の血」や「Oh! Penelope」で活動してきた渡辺善太郎氏のユニット"atami"の1st full album。avex traxからリリース。
 渡辺善太郎氏の名前はプロデューサーとして広く知れ渡っていて、Charaやトモフスキー、猫沢エミ、松崎ナオ、hitomiなどを手がけています。このヒトの奏でるメロディーはとても耳に馴染むし叙情的で切なく、彼の深みのあるアレンジは歌い手の表現をいっそう引き立てています。
 今回のゲストボーカルはキリンジ、K.、Chara、ハトリミホ(from cibo matto)、biceで、ジャケの派手な印象とは対称的に内容はとてもセンチメンタリズムに溢れています。何というか、「聴いた事のある音楽」という感じ。
 avexだからと言って、イイ意味で全然流行を追っていない1枚。


 
Atlas / standing on shoulders

atlas-standingonshoulders
artist:Atlas  title:standing on shoulders  label:radiate
 多分恐らくfromイギリスな4人組切なげポップバンドの1st single。かなり情報が少ないです。
 出だしを聞いた時はアイスランド生まれのBさんが歌ってんのかと思ってしまった。声が似てます。で、しばらく聞いてるとアルペジオの聞いたキラキラポップかつ、これまたシンプルなバンド構成でライトな楽曲を聞かせてくれます。かなり聞きやすい感じ。しかも1曲目はtore johansson大先生プロヂュース。
 というか何でシングルのレヴューをしているのかというと、このバンドシングル出してから音沙汰無しなのです。アルバム出すって噂があったのになぁ。バンドのホームページも閉じちゃって悲しい感じです。結構いい音出してると思いますが。
 誰か情報求む!!


 
aus / lang

aus-lang
artist:aus  title:lang  label:preco
 東京はYasuhiko Hukuzono氏によるelectronica/IDMな4th album。リリースはLINUS records主催のPrecoから2枚目。
 メロディックな電子音が、ダンサブルなprogram beatを基盤に切なく舞い踊る、耽美的electronicaです。冒頭の時計が刻む音から始まって、緻密に編み上げられたグリッチノイズやドラムサンプルが非常に暖かい躍動感を生み出しつつ、冷ややかだけど心地良い電子音のハーモニーが、トラックのセンチメンタルを助長してtrip。
 boards of canada、i am robot and proud、isan、rei harakami、autechre、aphex twin等が好きで、優しい感じの音を求めている方なんかにはとてもお勧めです。殆ど白・水色・灰色だけで彩られたジャケ写も、音の雰囲気を象徴していて、淡くて切ないノスタルジーに恋をしてしまいます。
 ボクが見たliveではvjもいて、尚良かった。